前回から、すっかり時間がたってしまった。バッタバッタとクリスマスを迎え、あれよあれよという間に新年をぶっちぎり、ヴァレンタイン・シーズンを迎えている。記憶から薄れつつあるカルフォルニアの光と匂いは、ひょっこりとまだ裏寒い2月の陽だまりの中に立ち現れたりする。
僕にとってフィリップ・スタルク先生(Vol.11参照)は、デヴィッド・ボーイ先生、アンディー・ウォーホール先生、林家ペー師匠と同棚に鎮座するポップ・アイコンでありトリック・スターだ。時代と添い寝し、時代を翻弄する遊び人。今度はどんな魔法で欺いてくれるのか。脳ミソのお遊びを強要する詐欺師達だ。そんなスタルクの魅力が満載だったロサンゼルス、ハリウッドのはずれにある“SLS HOTEL&Restaurant BAZZAR”。
前回のお約束、“SLS HOTEL”のデザイン&料理のレポート・解説を、お届けします。
「空間デザイン:スタルクの世界(レポート&解説/フィリップ・金指)」
エントランス1
日常に慣れ親しんだものを変形させることによって新しい価値観を作り出すスタルクの手法がある。最もわかりやすいパターンは花瓶やスタンドランプなどの巨大化。ここでは、花瓶を巨大化・シンメトリー(左右対称)にしてエントランスのインパクトを出している。僕の夢は世界一でっかいハンコを作ることだが・・。
エントランス2
実物大のランプシェードを頭に乗せた馬とトレーを背中に乗せた豚。この作品はオランダのmoooi (モーイ)の作品。スタルクがチョイスする置物は、ウィットにとんだものが多い。ちなみに東京恵比寿のTOOTH TOOTH、丸の内のBARBARA market placeにこれと同じお馬様が鎮座します。ぜひ拝観くださいませ。
エントランス3
スタルクミックスの進化系。異なる素材、異なるテイスト、異なる時代背景をモダンに混ぜ合わせる技。後方のCOOLなスタンドランプは、デューク東郷もびっくり!米国製の機関銃M-16がモデルのスタルクデザイン『LOUNGE GUN』。
エントランステラス1、2
なんじゃこりゃあー。「趣味は盆栽です」。ちょいと違うのは(1)でかいこと。(2)が・・・・・イカレテルこと。
エントランステラスチェア
水牛の角フレーム、クロコダイル張りロココ調ソファー。悪趣味もここまでくればウルトラ・モダン。「組長、どうぞお座りくだせいっ!」。
レストランラウンジエリア1
テーブルドットと呼ばれる一度に数十人座れる、スタルク常連アイテムの長大テーブル。進化系は天板にLEDの画面が埋め込まれ様々なイメージが映しこまれる。モチーフはバロックやロココ調。最新のテクノロジーにも色目を使う。
レストラン Aメインダイニング・デシャップ
北欧テイスのナチュラル感を打ち出し、正統派レストランとしての機能を匂わせる。組み合わせの妙に、ムーミンもびっくりにゃん。
レストラン Bメインダイニング
Aメインダイニングと対照的なBダイニング。夜のお遊び感ぷんぷんの、エロ・モダンなスペイン・バール・レストラン。シェフ“ホセ・アンドレス”の世界感が溢れる空間。
レストランケーキエリア3
ガーリーでスィートな甘いものエリアにようこそ!モダン・ロマネスク。スタルクちゃんの精神的おかま具合がとってもラヴリーよぉん♥
トイレ
白いよー遠いよー。2001年宇宙の旅の最後のシーンのようなトイレ。洗手するにはテーブル上の四角の板の四方からじんわりと湧いてくる水を、「手のひら浸し洗い」するという、誠に不思議なはじめての経験。ありがたいような、まどろこしいような。
ベンチシート
まるでアムステルダムの飾り窓?いかがわしいベンチシート。
テラス席2
オレンジ色を背景にプリミティブかつアフリカンモダンなミックス&マッチ。キャラバンで旅してるようなボヘミアンな折衷スタイルとでもいいましょうか・・。
スタルクの世界とは、エッジーもゆるさもアートも混在した、散らかし放題のサンクチュリアだ。時代も国境も超え、夢と未来が見渡せるエレガントな遊び場。世界のセレブリティーも納得の、ゴージャスでジョークに満ちた頽廃の世界かもしれない。まるでMADONNAの音楽のような楽しくて健康的で?快楽的でゴージャスなもの。その内側に、血の滴るような「SEX」を隠して。
次回は、「Restaurant BAZZAR:Jose Andres/ホセ・アンドレス」のクリエイティブな料理を、ハングリーモンスター中塚料理長がメッタ切りするぞ!お楽しみに!