Vol.27

こんにちは、金指光司です。
金指光司“・・・・・・・カナサシコウジ”という名字・名前だが、どうやら難しいらしい。
言いにくく、必ずと言っていいほど聞き返される。名前の発音のむずかしさもさることながら、漢字がまた、わかりにくいようだ。この間も歯医者の受付の若い女の子に名前の説明するのに苦労した。
「金指」では、金“きん”の指“ゆび”まではいいのだが、「光司」に至っては、光“ひかる”に司“つかさ”と言うと、書けないようだ。これならわかるだろうと、光“ひかる”に、寿司/すしの司“し”と言ったら、
と“し”を伸ばされて書かれた診察券を渡された。

お店を始めたころも苦労した。
起業した店の名前がTOOTH TOOTH/トゥーストゥース。
最初に起こした会社名が(有)SO WHAT/ソー・ワット。
月末の業者からの請求書の宛名においては、正しく書かれているものは皆無に等しかった。特に、氷屋のおっちゃんには至極難しいらしく、長い間、請求書領収書の宛名が、
“(有)・・ソー・・・・・ファット、・ッ・・・スッス、・・・・カナグシ様”と、全問不正解であった。

その名前の「光司」の由来だが、うちの母が僕を身ごもったときに夢を見たらしい。
僕自身幼少期より、この話を母から何度も繰り返し聞き非常に困惑し続けてきた。
なかなか子供ができなかった母がようやく僕を授かった。その時の話だ。

病院に今度こそと思い、妊娠の有無を聞きに行く数日前から何度も同じ夢を見たらしい。
こんな夢だ。「大便の山から金の鯉が何匹も飛び跳ねている・・」
まるで“しりあがり寿大先生(※2)”の世界だが、母の夢の方が臭い。
そして、どこで聞きつけたのか、「そりゃ縁起のいい夢じゃ」と親戚縁者知人友人ご近所様の、口の端に上る始末。挙句の果てに、どこかの易者に「生まれてくる子は食うことに困らぬぞぃ」などと、予言されたようだ。
「大金持ちになる」とか「大成する」とかなら分かるが、「食うに困らぬ」とはレベルが低いような気がしていたのだが、今こうして飲食業を営んでいる運命を重ねている自分がいたりもするので、母の高度な洗脳技術なのかなと勘繰ったりもする。さて、名前の方だが、そんな夢の話に舞い上がった母が、近所のお寺にこの夢の話と僕を連れて行き、そこの住職につけていただいた名前だそうだ。そんな臭い話をして、「名前をつけてくれ!」と言った母も母だが、そんな臭い話で名前を考えたついた坊主も坊主だなと思う。

以上のようなことがトラウマになったのか原体験になったのか、店舗につける名前に関しては慎重を期する。名は体を表すといわれるそうな。
僕たちが出店する場合、偶然と必然が共存しているのだが間違いなく言えることは、お店を作る場所を熟知することと心から愛でること。そして、自分たちのクリエイションとその地域の人々の求めるものの最大公約数を抽出し、その場所が求める最高のものを提案したいということだ。そんなことがネーミングの奥底に、どっかりと鎮座するべきだと考えています。

しかし、改めて、自分の名前を思うにつけ、「糞まみれの金の鯉が飛び跳ねてる」絵柄が浮かび、なんだか元気が出るというか、何があっても大丈夫なような気がするのは、アホらしくもあり、心がほっこりと暖かくなる。