TT:そういえば金指さんって、こうしたインタビューにあまり出てこないね。
KK:登場する気がしないんですよ。「上場を目指していますか?」なんて、聞かれるし。でも、この10年は飲食業界ブームで、いろんな経営者が出てきて、サクセスストーリーを語っていますが、基本的にみんな同じ方向性なんですよ。「人の力だよ」「上場しようよ」って。そこと違う角度で飲食業界の「バタい」ところでの面白さとか、飲食業界に最初に入ってくる人たちが考えていたところをクローズアップする企画って今までなかったんです。
TT:金指さんみたいな人がいることを、若い人に伝えるべきだよ。この面白さをセンテンスじゃなくてもいいから、神戸にもこういう人がいるっていうことがもっと広まればいいなぁって思う。
KK:飲食業界で言えば、以前から感じていたことなんですけど、パリでカフェが発達したのは、それ以外の何かが発生したわけで、そこをクローズアップすることがあんまりないんです。なぜかというと、それはものすごく抽象的で複雑でアカデミックなんです。今、最初に飲食業を営もうとする大多数の人が「儲けよう」「成功しよう」「自分の技術を磨こう」の3つだと思うんです。「何かをクリエイトしよう」っていうのが、抜け落ちている。書物でレクチャーするにしても、そこの部分はこれから若い子にとっては、本当に大事だと思うんです。
TT:いいですねぇ、ぜひやって欲しいですね、そういうレクチャー。それによって1人かもしれないし100人かもしれないけど、何かを見つけられる人が出るかもしれない。
KK:資本主義社会のまとまった形の最大公約数で成り立っている飲食業以外に、ホントに地球上に存在するべき飲食業界に人が来ないっていうことにおいては、こういうことを話すのがとても大事で、また若い子もお金だけが欲しいわけではないんですよ。一人で生きていきます、とか左官職人で生きていきますっていう人がものすごく増えていますし。今まで、数の思考だったのが、少数思考になりはじめている。中心から情報を発してやるんじゃなくて、周縁でそこのキャパシティにあったことをやっていくって正しいことだなって思うんです。
TT:今度、日本文化デザイン会議2007兵庫というイベントの中の1コマで神戸で会議をするんですが、僕が企画、進行を担当します。神戸はあれだけの地震を体験しながら、リアリティというのは何なのか、ということにしか興味がなかった。身体にもタマシイにも本当にリアルに満足いく感じを知ってるような気がする。震災のあとにも、それを続けているっていうのは、神戸の人にとっては当たり前のことなんだけれども、それってすごいことなんじゃないかな、と思う。特に震災以降、ホントに光って見えたような人がたくさんいるので、そんな人たちと絵物語をテーマに話したいんですよ。絵物語っていうと絵空事とおんなじで、なんかふわふわと実態のないもののことに思うんだけど、でもそれがこの世で人を実際に動かしていく。どんな絵物語をイメージするかって実は大切なんじゃないかって思うんです。
KK:風穴を開けるっていうのは、そういうとこかもしれませんね。
TT:なんか金指さんの動きをはたから見てると、なんか絵物語をイメージしながら進んでるような気がするんです。ぜひ神戸の会議に参加してもらいたいなあ。若い人にそのあたり伝えてって欲しいんです。
KK:そういう世代に変わってしまったんだなぁ、もうおっさんなんだなって(笑)。
TT:こんなおっさんもいるってことをね、見せないとね。100%のおっさんじゃなく、0.1%のおっさんとして。