TT:スタッフも客も強者ぞろい、まるで猛獣使いだ(笑)。さっきも話したけど当時、いろいろな人の“夢”を集めていて、同人誌を作ったりしていたんだけど、人に逢うと「なんか夢見た?」って聞いていた。そういうことをするには、ここはもってこいの場所だったね。

KK:とにかく面白い人ばかりでしたね。ドロップアウトした人間とかいるかと思うと、実社会の闇の人たちも混ざるんです。深夜ともなるとそれが最高潮に達する。僕が店に立った理由も、そういう人たちとの会話に免疫をつけるためだったわけです。というか、飲まないと耐えられない(笑)。それで、すごい鍛えられました。

TT:こういうところに飲みに来ると、ある意味、学校行くよりしんどいよね。「あれ知ってる?」「これ知ってる?」とかね。

KK:でも好きだからしかたない(笑)。いろんな人間が集まってきて、自分の知らない情報をもっと肥大化してもらう。感性の部分もそうなんですけど、料理やワインをやっている人、その商売をやっている人がいますよね。そういう人たちにいいことも悪いことも肌感覚で教えてもらう。

TT:夜だけじゃなく、昼もそういう人が来たの?

KK:ええ。ですから、300円くらいで、2,3時間いられるコーヒー屋はうらやましい

TT:今もきっと、10代、20代の色々なんかさがしてるような人がいっぱいいるでしょう?僕たちのころは受け皿になる場所が開かれていて、その人たちを活かして、集めている人たちもいっぱいいたなぁって思う。先生として大学に行くようになって最初は違和感を持っていたんだけど、自分もその頃は同じだったんだなぁって。出会いがあるかどうかで全然違ってくるよね。あの頃は怪しいおっさんとか変なお姉さんがいて鍛えられたけど、今は出会うことさえも難しい世の中になってしまっている。そんな意味では金指さんには、新しい世代の猛獣たちの受け皿になってこれからも進んで欲しいなぁ。

KK:気が重いなぁ。でも、飲食業界の人たちが求人とかアプローチしている文章を見てみると、妙なプラス思考で、「がんばろうぜぇ!」みたいに力んでいるように感じるんです。そう人たちのことを知っているから、自分の内面のことを全然言ってないなぁって。お店を始めたときも、その時の業界に対して「嘘つき!」と。でも、資本主義と相容れるには、妙な規模になってきてしまった。デヴィッド・ボウイも言っていたから大丈夫だろうとは思うんですけど(笑)、革命的なことを、自分が信じた方向に向けていますね。